芦原妃名子さんの作品を最初に読んだのは『砂時計』だ。
子どもの頃の成長から大人までしっかりと繊細な心模様の「時間」を描く、とても上手な作家さんで、好きな作品の一つだった。
20代半ばくらいから漫画はいくつか雑誌で読むようになり、『Bread&Butter』(以下、『B&B』も『ココハナ』で初回から連載を読んでいた。
恋愛・結婚がテーマのマンガが多く、何度か「この雑誌は読むのやめようかなあ」と思ったのだけれど、その中でも読みたくて読んでいたのが『B&B』だった。
『B&B』も、カップルのあいだの関係性、恋愛や結婚といったトピックも扱っていたが、どちらかというと登場人物はみんな「仕事」と「生活」のことを悩み、語っている「お仕事マンガ」だった。
主人公の柚季、パートナーの洋一も、違いはあるが、根が真面目でストイックな凝り性だ、ということは共通している。
ただ、そのこだわりに集中する姿勢や時間の使い方が時に生活や他人を傷つける。
そのことをどのように調整していくか。
いかに「質の高い仕事をしていくか」ということと、社会で他人たちと生きていくことの両立について描く作品だった。
『セクシー田中さん』は、掲載誌を読んでいなかったので、単行本で何巻か読んでいたけれど、『B&B』ほどの面白さを(私は)感じることができず、読みつづけていなかった。
今回、このように『B&B』について書いているのは、芦原さんが亡くなられたからだ。
お亡くなりになられた詳細はわからないが、『セクシー田中さん』に関する騒動があったこととのつながりは考えざるを得ない。
ドラマは見ておらず、脚本家のSNSは見ておらず、騒動自体は芦原さんの投稿を見て知った。
「またか」と思ったのは、その前年、相沢沙呼氏原作のドラマもトラブルになっていたことが記憶にあったからだ。
とはいえ、見ていない作品のことだったので、リポストなどはしていなかった。
その後の報道で、芦原さんが亡くなったことを知る。
そして、日テレが素早くコメントを出したことを知る。
双方の主張が食い違う以上、日テレが「最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております」と一方的に報道するのは違うだろう。
このコメントは、例えばその番組のHPなどで公表されるなどではなく、自局の報道番組でも繰り返し喧伝された。それはフェアではない。
よしんば、日テレの主張の方が100%事実として正しかったとしても、それを人の死を報道する際にあわせて伝達することが、いかに亡くなった方とその関係者を傷つけるものであるか、そこは想像力を働かせることはできるはずだ。
今回の件がどのように決着するのか、またそれをご親族や関係者が望んでいるのかわからない以上、現時点で部外者に言えるのはここまでだ。
何より、芦原妃名子さんの素晴らしい作品が、今後も読み継がれることを願っている。